悲しいことがあったんだ。
一つ、話をしましょう。私の知っている人で知り合いの知り合いの人です。
その人は今回のリトバスSSに参加するつもりでした。一本のSSをかき、投稿するかまよっていました。
まよっていた、というのはこのSSが規定に触れるか触れないか、ぎりぎりのところだったからです。
まぁそれはともかくかきあげよう、とおもい、あと少しで完成、というところにこぎつけました。昨日、すこし手を加えれば完成したでしょう。
しかし、彼はそれをしませんでした。なぜなら悲しいことがあったから。
「水が、水が、水が〜、先週一週間モニュモニュしていたのが馬鹿みたいじゃないか」と昨日一日中そういって沈んでいました。書き足す気力がないくらいに。
彼に何があったのかはわかりません。そしてしってはいけないことだと思いました。
まぁそんなわけで完成せず(とりあえず落ちているけど)、規定に反しそうなので彼は投稿しませんでした。
で、それでいろいろあってこちらで公開(何
とりあえず落ちてはいますので没にするのももったいないだろう、と。ただもうちょっと書き足す必要はありそうですが。
注:R12に限りなく近い、R15くらい
トクン、トクン、トクン――。
この音を聞くとあたしはすごく安心する。
――理樹が、生きていることを、すごく実感できる音だから。
『6月20日』
昨日あたしは理樹のところに泊まった。
後始末はちゃんとしてくれたみたいだけど、自分の体に残っている感覚を考えると理樹は昨日も相当無茶したみたいだ。
6回くらいまで記憶にあるがそこから先の記憶がまるでない。気を失っていたんだと思う。
理樹としたときはいつもこんな感じだった。
あたしのほうが先に気絶してしまう。
”いってしまう”のではなく、”気絶してしまう”
気絶してしまう、と大学の親友にいったら、「ふつーのカップルじゃない」といわれたが、事実だから仕方がない。別にあたしは悪い気はしていないし。
でもだからといって。
理樹ばっかりに好きな思いをさせるのはしゃくだから、もうすこしあたしの好きにさせてもらおう。
時計をみると、まだ7:00だった。今日は10:00に墓参りに行く予定だから、時間はたっぷりあるみたいだ。
だったらもう少しこうしていよう、と、布団の中であたしは理樹の体に触れた。
トクン、トクン、トクン。
心臓の動きを掌で感じる。――くちゃくちゃ、幸せだ。
好きな人の胸板に触れるだけでこんなに幸せを感じるなんて、思わなかった。
そんなことを考えながら、あたしは理樹の体に触れ続ける。
髪の毛や、胸板や、唇に。理樹は眠っているのでなされるがまま、だ。
幸せそうに眠っている寝顔をみると、こっちまでより幸せを感じられる。
昔は、何が幸せだなんてわからなかった。
自分が、幸せだってことに気づかなかった。気づいたのは、失ったとき。
小毬ちゃんも、クドも、来ヶ谷も、葉留佳も、美魚も、謙吾も、真人も、馬鹿兄貴も、失ったときだった。
あたしはもう、あんな想いは味わいたくない。今日という日は、強くそれをおもわせる。
だから――だから、理樹。
「あたしのそばからいなくならないでくれ」
ガシッ
「え?」
とつぶやいた次の瞬間、理樹に思いっきり抱きしめられていた。
―――
――
―
「り、理樹、お前人間か!?」
真っ赤な顔をしてあたしはいった。
「いや、人間だけど」
「昨日アレだけやっておいて、朝から4回、しかも3回は抜かずにってどういうことだ!?」
「いや、ふつーだとおもうけど」
ふつーじゃない、絶対普通じゃない。しかしこうなったら絶対理樹は譲らない。
「まったくもう・・・って、てかあたしこれから動く元気あまりないぞ」
時間は朝の8時30分になっていた。10時に出ようとおもったらそろそろ色々しないといけないが…体力使い果たした。理樹はまだ余裕みたいだけど。――ほんとに理樹が人間なのか最近疑わしくなってくる。
ってか普段の理樹から考えるとありえない。
「じゃあ、もうちょっとゆっくりしていこうか」
そういって理樹は笑いながら――あたしを抱きしめた。
「なぁ、鈴」
「なんだ、理樹」
「僕は――どこにもいかないから」
「え?」
あ、あたしがさっきいっていたの聞こえてたのか。
「僕は、恭介や、真人みたいに、強くもないし、鈴を巧く守れないけど」
そこで理樹はいったん言葉を区切って、あたしをまっすぐみつめる。
「でも、鈴と一緒にいたい、って気持ちは誰にも負けていないから」
そういって理樹はあたしを抱きしめた。
「うん、ありがと」
あたしはそう、答えた。
管理人感想:理樹くん鬼畜ですね。
ぼくにはとてもこんなりきくんかけないや。